談話室『和太刀』

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『雑!!演殺陣人達(ざっつ!!えんたてめんつ)』 29:N君の想い出

『雑!!演殺陣人達(ざっつ!!えんたてめんつ)』

 このコーナーは、和太刀主宰者・清水大輔の子役から始まり、
殺陣師になり、現在に至るまでに出会った人や出来事をかき集めて
バラバラに(思いつくままに)脱ぎ散らかしたエッセイ風の独白文です。






29:N君の想い出

まだ私が子役として働いていた時の事。

あるヒーロー番組でレギュラーになった私。
『レギュラー』というのは確かに名誉な事だが、おかげで学校を(仕事のため)休みがちになるので、
勉強が他の子からガンガン遅れて、親は担任に呼び出される始末。
担任「こうなる事はわかっていたから・・・だから必死に勉強喰らいついて頑張るんじゃなかったの!?」
その通り。それを言われては何も言い返す事は出来ない。
当時、毎日の様に朝早くから夜遅くまで撮影していたので(正式には小学生が夜中まで仕事したらダメなんだけど・・・。当時は規制も甘かったんだと思う。)
終わってから勉強しようと思っても襲ってくる睡魔にはどうしても勝てず、
みるみる落ちる成績と冷たくなる親の態度。
撮影の休憩中も、いつの間にかふさぎ込んでしまうようになっていた私であった。

すると共演していた同じ子役のN君が、「どうしたんだ?オマエ。」と声をかけてきてくれた。
その番組ではレギュラーの子役が私を入れて5人いた。
主人公である正義のヒーローから黄金のバッヂを渡されていて、
悪の組織に自分達が追いつめられたり、ピンチになったりすると、5人のバッヂを合わせる。
するとそこから上空にビームのようなものが発射され、それを見たヒーローが救出に現れるという設定の番組だった。

N君は子役の中で一番年上の中学1年生(当時私は小学校4年生)だったが、
子役グループの中で一番身長は小さかった。
小さくて、休憩中もいつもハネ回り、大人の俳優やスタッフにイタズラをしたりしていて、おしゃべりはマシンガンのような早口でまくしたてる様な元気なヤツだった。
イタズラをして、「こらっ。N君!!」とスタッフに怒られてばかりいたが、何故か憎めないヤツだったので大人にも好かれていた。
私は結構人見知りするタイプだったので、そんなN君がちょっぴり羨ましかった。
仕事の方も要領良くこなしていたN君に対して、私は動きも少々トロく、NGを連発してみんなに迷惑をかけていた。
当然監督さんにも怒られ、他のスタッフにも白い目でにらまれた。
「あ~あ、またかよォ!オマエ、ただでさえトロいんだからさ、もっと集中しないと・・・。
クビにするぞ!!子役なんて他にも大勢いるんだからな。オマエよりもっと優秀なヤツがさ~。」
とか、そんな事を言われた。
じゃあその優秀な子役に頼めばいいさと私は心の中で言い返し、半ば自暴自棄気味になっていた。
どうせこのままでは又NGの連発である。
だったらNGを出さずにすんだ方がみんな喜ぶし、撮影もスムーズに進むというものだ。
などと考えながら、昼間のロケの休憩中、広場の隅に置いてあったドラム缶にもたれかかって座り、足下の草をむしっていた。
そんな私に声をかけてきたのがN君だった。

N君「オマエ、メシ食いに行かねェのか?」
私 「イイよ。別に腹へってないもん。」
N君「オマエ最近元気ないな。何かあったのか?」
私 「別に・・・。」
N君「オマエ、レギュラーって初めてか?」
私 「ウン、まあ・・・。」
N君「ふーん、じゃあどうせ学校の成績落ちて親に怒られたりしたんだろうな。」

私は目玉が飛び出る程ビックリした。
そんな事一言も口に出していないのに、落ち込んでいる原因をピタリと言い当てられてしまったのだ。

N君「やっぱりな・・・。あのさ、オマエこの仕事好きなの?」
私 「エ・・・?エーッと・・・まあ、嫌いじゃないけど。」
N君「じゃあさ、別に学校の勉強が少しくらい出来なくたって、元気出して仕事しなきゃあ。
学校と違ってギャラもらって仕事してるワケだしさ。
それに嫌いじゃないなら・・・好きなことやってるって思ったら学校の勉強より今はこれを大事にしようぜ。
学校もダメでこれもダメじゃホントにダメな奴になっちゃうぞ。お母さん悲しませるなよ。それに画面の向こうのお客さんに失礼だろ?」
   
私は普段と違って真面目なN君の物言いに驚いた。
それに多少強引なところはあるものの、「確かにその通りだ。」と思った。
するとN君が、

N君「ゴメンな、説教しちゃって。実はさ、今日お金持ってくるの忘れてさ、130円しかないの、オレ。
スタッフにも言いそびれちゃってさ。メシ代貸してくんない?それでオマエに声をかけたの。ヘヘヘヘ・・・。」
私 「はあ?・・・あ、別にいいけど。へへへへ。」

私は面食らってしまったが、いつの間にやらN君のペースに巻き込まれ、気がつけば元気を取り戻してした。
それから2人でカレーを食べに食堂に出かけた。




ざっつえんたイラスト29





あの時、N君は本当にお金を忘れたのだろうか。
それとも私を元気づけてくれたテレ隠しに、そんなウソをついたのだろうか。
今となっては知る由もないが、不思議なヤツだったなぁと今も時々N君の事を思い出す。





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[ 2013/02/25 00:00 ] ざっつえんた | TB(-) | CM(-)
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