談話室『和太刀』

~立ち廻りから得られる身体のお得情報!~

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『雑!!演殺陣人達(ざっつ!!えんたてめんつ)』 28:地獄のウルトラセブン

『雑!!演殺陣人達(ざっつ!!えんたてめんつ)』

 このコーナーは、和太刀主宰者・清水大輔の子役から始まり、
殺陣師になり、現在に至るまでに出会った人や出来事をかき集めて
バラバラに(思いつくままに)脱ぎ散らかしたエッセイ風の独白文です。






28:地獄のウルトラセブン

 今から20数年前の話。これまでにも述べてきた通り、私はスーツ・アクターと呼ばれる仕事をしていた。
(その当時はそんな呼び方されていなかったのだが・・・。)
つまりはヒーロー物のスーツを着てアクション・ショー等をしていたというワケだ。
仮面ライダーシリーズ、戦隊物から「ゲゲゲの鬼太郎ショー」から「ガンダムショー」まで、
多種多様なスーツを着てアクションをこなしていたワケだが、
中でもシンドかった・・・イヤ、大袈裟ではなく『死の一歩手前』の経験をしたのが
『ウルトラセブン』のショーだった。
私自身、幼少の頃、『ウルトラセブン』と言えば、憧れの存在だったので、
それを自ら演じる日が来たというのは、多少なりともワクワクしていた様に記憶している。
それがあんな事になろうとは・・・。

 御多分にもれず、この手の仕事というのはすべからくキツイ。
スーツの中では汗グッショリというのはおわかり頂けると思うが、
スーツによっては視界がとても不明瞭なため、相手役はほとんど見えず、
カンでアクションをせねばならない事態になるなど、日常的に起きる事である。
ウルトラシリーズのヒーロー達も、スーツを着るとほとんど地面(自分のすぐ足下)しか見えない様な所にしか『のぞき穴』は開いていない。
それに素材が、いわゆるダイバーのスーツに近いものだから、体にパツパツに張りついてしまって、
とても一人では着られない。イヤ、例え人に手伝ってもらったとしても・・・。
だからまず裸にベビー・パウダーをふりまき、ウルトラセブン(スーツの)をうつ伏せに寝かせて背中のジッパーを開き、自分もうつ伏せなって、徐々にスルスルと入っていくという、誠にメンドくさい手法で着込んでいく。
そしてえっちらおっちらと立ち上がり、人に背中のジッパーをしめてもらうという具合である。
ヒーローの身体にシワが入っているのはとても格好がつかないのは理解出来るが、
それにしてもパツパツに張った状態で、着ているだけでも全身がシメつけられる。
昔、ウルトラシリーズをTVで観ている時、片腕を上に上げてもう片腕を腰元にもってくるような、

いわゆるベタなヒーローポーズをやる時、ヤケに勢いをつけてやっている様に感じられたのも、
自分が着てみて何故だかわかった。
勢いをつけて反動を使わないとシメつけが強いため、腕が伸びないのである。
だからウルトラヒーロー達は自分の出番がくるまでの待機中は、身体の各関節を伸ばすのもシンドイため、
猫背でぐったりとしている。まるで老人の様に。
で、頭には手拭いを巻く。今は面下(下面ともいう)という覆面レスラーの顔のところがポッカリ開いているものが用意されているものだが、当時は持参のタオルを頭に巻いてスーツを着ていたものである。
(ただし、戦隊モノやらライダーにはちゃんと下面があったので、ウルトラシリーズだったから?であろうか。それは不明である。)
で、タオルの巻き方が甘いと、スーツを着た途端にちょっと動いたらスルリと取れてしまう。
すると、したたり落ちる汗で余計に視界が・・・、イヤそれどころではない一大事が起きてしまう事があるのだ。

その日の私がまさにそれ。
タオルの巻き方が甘く、時間をかけてスーツを着込んだ時にはもう中でタオルが取れていた。
で、そんな事に構ってはいられないから、「ジュワッ!!」と格好良く出撃。
怪獣役の仲間と真夏の照り付ける太陽の下、ゼエハア言いながらアクションをこなした。
もう一つ、この(ウルトラ)シリーズのスーツのやっかいな所は、呼吸をする為の穴等、一切開いてない事。
先程説明した小さなのぞき穴からわずかに入る空気だけが頼りなのである。
だからアクションが終わったら早々に裏に戻り、ジッパーを下げて(これまた苦労して)顔を「プハーッ!!」っと出さないと、ホントに窒息寸前になるのだ。
ましてやその時の様な炎天下ではなおさらである。
で、窒息寸前の私は裏に戻り、ジッパーを下ろしてもらおうとしたのだが・・・。
下りない!!何と中でタオルがほどけて落ちていたため、髪の毛がジッパーにかんでしまっていたのである。
もうこうなるとパニックだ。
仲間2人が必死にジッパーを下ろそうとするのだが、思いのほか大量の髪の毛が絡んでいたらしく、全くジッパーが下りない。
当然、髪の毛が引っぱられて痛いはずだったが、そんな事よりも呼吸が出来ない苦しさといったらなかった。
人間、息が出来ないと余計にパニックになり大量に息をしようと思うもので、もう気が狂いそうになってきた。
何せ、いましがたまで激しく身体を動かしてきたばかりだから尚更である。
MC(司会)の女の子の、「私、ハサミを借りてきます!」という声が聞こえたが、その時はもう意識が遠くなりかけていた。
「こんな所で死ぬかもしれない・・・。ウルトラセブンの中で・・・。」と、うすれる意識の中で思ったりした。


 ざっつえんたイラスト28






ジョキ! ジョキ!・・・・・・!! 
どのくらいの時が経過したのか。私は自分の髪の毛が大量に切られる音で我にかえった。
そう、MCの女の子が借りてきたハサミのおかげで、大量に後頭部の髪の毛を失ったかわりに、何とかセブンから脱出成功出来たのである。
「大輔さん!! 大丈夫ですか!?」と仲間に声をかけられたが、返事なんか出来たものではない。
10分位の間、とにかく「ヒー、ハァー。」と呼吸を繰り返し、ようやく落ち着いた私。

その日の仕事帰り、後頭部付近の髪の毛だけ短くなった私が、
似合わないキャップを買ったのは言うまでもない。


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[ 2012/10/28 00:00 ] ざっつえんた | TB(-) | CM(-)
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