談話室『和太刀』

~立ち廻りから得られる身体のお得情報!~

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『雑!! 演殺陣人達(ざっつ!! えんたてめんつ)』 ⑪山の上の白塗り

『雑!!演殺陣人達(ざっつ!!えんたてめんつ)』

 このコーナーは、和太刀主宰者・清水大輔の子役から始まり、
殺陣師になり、現在に至るまでに出会った人や出来事をかき集めて
バラバラに(思いつくままに)脱ぎ散らかしたエッセイ風の独白文です。





⑪山の上の白塗り

大学時代の友人が社長(代表取締役)となって芸能プロダクションを起こしたのは今から二十数年前。

 現在でもそのプロダクションは続いているわけだから、
入れ替わりの目まぐるしいこの世界では、まあ成功した方であろう。

 

 そのT君がまだ会社を立ち上げたばかりの頃、突然私に電話がかかってきた。
当時、ケータイ電話がまだ出たばかりの頃で、
T君はカバンかと思う程の大きさのショルダー式のものを肩にしょって自ら営業し、
仕事を取っていたと思われる。
で、その電話を使っていたらしく、声も途切れる事がしばしばの、とても聞きとりにくい内容だったが
(当時のものはとても性能が悪く、まるでジャングルかと思うくらいの雑音にまみれて人の声が何とか聞きとれるといったレベルだったが、それでもポケベルが流行するさらに前の話だからそれも仕方あるまい)
どうやら仕事の相談らしい。



T君「今度ウチで抱えている子が…あ、この子アイドルなんだけど、
その子が短編映画…ま、Vシネマみたいなことだね。
それに主演することになってね。で、殺陣が出来る人達を4、5人捜しているんだけど…。
撮影は1日だけ。茨城の山の方で撮影なんだけど、やってくれないかな?」


私 「ウン、いいけど…。」(何かあったら手伝うよと言っていたので断れない私)

T君「で、悪いんだけど、キミの他に殺陣の出来る子があと3、4人欲しいんだけど。
後輩かなんかでもいいから捜してくれないかな。」


私 「ウン…いいけど…。」(やっぱり断れない私)



 とまあ、こんなやり取りが交わされ、私は同期の者1人と先輩1人、後輩2人に声をかけ、
数日後には茨城の山の中にいたのである。急な話にシブる同級生には、

「どうしてもとT君が言っているんだよ。キミを名指しでね。
殺陣が出来るという条件なんだから、もうキミしかいないんだよ!!」

等と言いくるめたのを覚えている。後で思えばそんな事をする義理はない。



 フタを開けてみれば、それは短編映画というよりプロモーションビデオと言った方が良いくらい
(もっともそのアイドルは別段歌を出しているわけではなかったので、短編映画には違いないのだが…。)
小規模なもので、そのアイドルの子とスタッフ4、5人と私達4人の計10人くらいで、
山の上の農家をお借りして、そこを準備する場所とした。

 それにしてもどんな殺陣を? と思っていたら、
助監督なのか監督なのかわからない男の人が白い粉を持ってきて、
「これを塗って下さい。」と言う。

「なる程! どうやらホラー物に近いものではないのか。
そのアイドルの子を私達が白塗りの(言わばキョンシーの様な)化物となり襲うのではないのか?」
と私は推理した。

で、粉を顔を塗ろうとしたら、そのスタッフが

 「ア、イヤ。塗るのは手と腕だけでいいんですよ。」と言った。

ナヌ? 腕だけって…。



スタッフ「今回はタイトルが『納屋』というんですが、そのクライマックスシーンで
納屋に閉じ込められた女の子を障子を突き破ったいくつもの手が襲うというシーンを
この山の上の納屋で撮影するだけなんです。」

ナヌ? 障子から手を出す…だけ? ……アレ? ……殺陣は?


スタッフ「イヤア…なんかウニョウニョした動きなんで…そういうのウマイのって、
ダンサーとか殺陣をやっている人の方がいいかなって…。アハハハハ(笑)。」

 

やられたっ!! くそっ!! T君めええ!!


  ざっつえんたイラスト12



 その後、開いた穴からチラリと首が写るかもしれないという事で、
腕と首を白く塗った私達は、その農家のオジサンが運転する軽トラの荷台に乗せられて、
ゴトゴトと揺られながら山の上の納屋に向かった。
途中何も知らない農家の方達が畑仕事が終ったらしく、
山から降りてきて軽トラの荷台に乗っている私達を見てギョッとしていた。


 そして結局スタッフの言う通り、その日一日障子から手を出してウネウネし、
中ではアイドルが「キャー、キャー。」と叫び、撮影は終了した。



 冗談ではない!こんなコトをするために山まで誰が来るものか!

 農家まで引き上げた私達に炊き出しのカレーがふるまわれた。
ついでに今日はもう遅いから農家で一泊していけと言われた。
私は怒りに震えて、「いいえ!カレーは結構です!何としても今日帰ります!行くぞ、みんな!」
と仲間達の方を見た。

そこにはアイドルの子の接待を受け、「いやあ、スミマセンねえ。」と鼻の下を伸ばしながらカレーをおかわりする仲間達の顔があった。

 

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[ 2012/02/29 00:00 ] ざっつえんた | TB(-) | CM(-)
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