談話室『和太刀』

~立ち廻りから得られる身体のお得情報!~

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『雑!!演殺陣人達(ざっつ!!えんたてめんつ)』 35 血も凍る!サンタの恐怖!!

まだ私がヒーローショーやら何やらをやっていた時の話。

毎年クリスマスの時期、ディナーショー等のイベントで行うヒーローショーの形態はいつもと違い、クリスマスにちなんだ中身だった。

いわゆる『戦隊シリーズ』のショーをやる時、レッド(赤)に入る人間がサンタクロースとなり、怪人達をやっつけるというもの。

まあ、レッドは文字通り『赤い』ので、それがサンタとして登場したらショーも盛り上がるだろうという、一見ナイス(?)なアイデアだったのだが…。


ある年のクリスマスショーで、毎年恒例の『クリスマス・戦隊サンタショー』を行う事になった。
私はその形式でショーを行うのは初めてだった。(先輩からその様な形式で行うという噂は聞いていたのだが…。)

で、私がリーダーであるレッドをやる事になり、アクションの振り付けを終えて控室に行くと、事務所から戦隊のスーツやら怪人やらが入っているデカい段ボール箱が届いていた。

中身を開けてものを確認。
すると、(私に関しての事だが)いつも通りのヒーロースーツとサンタの上着が出てきた。ズボンは無い。つまり、レッドの場合は元々下は赤い足にブーツなわけで、何もはかなくてもサンタと同じなのである。

だから後は、ヒラヒラとした赤い上着を羽織って、サンタの帽子をかぶれば『レッドサンタ』の出来上がり…のはずが……。

サンタの帽子の下にはグニャグニャとした老人のマスクがついていた。しかもゴム製である。

すると先輩が、
「さっきつけた段取り通り、オレらが(先輩は怪人役)会場の子供達を襲っていると、そこにジングルベルが鳴り響いて、お前(サンタの私)が出てきてオレらを倒し、曲が(戦隊のテーマソングに)切り替わった時に一気に正体をあらわして、そこから本格的にアクションが始まる。だから練習しとけよ、衣装を脱ぐとこ。」
と言った。

イヤ、その通り練習はしようとは思っていたし、大体予想していたのだが、まさか顔面にゴムマスクを被るとは思ってもみなかったのである。首から上はサンタ帽子だけだと思っていたのだ。

その事を先輩に言うと、
「バカ、当たり前だろ。帽子だけ被ったら顔はレッドのままになっちゃうじゃないか。だからレッドの仮面の上からサンタの仮面を被るんだよ。で、キッカケで老人マスクだけをサッと取るんだよ。」
と答えてくれた。


そ、そんな~!!

ただでさえヘルメット状態の戦隊マスクの上から老人のゴムマスクをピッチピチの状態で無理やり装着したら取るのに大変なコトになる。
イヤ、問題はそれだけじゃない。

ただでさえ視界が不自由なマスク(戦隊マスクはショー用のものであれば、ゴーグル状態の目のところに空気穴がプツプツといくつかあいている。この小さな穴を通して見て、そこから呼吸もするのである。)の上に、目の所にわずかに穴が2つあいたゴムマスクをつけたら視界はほとんどゼロに近くなる。オマケに呼吸もほとんど出来ない…。
一体去年までの人はどうしていたんだろう。

「まあ、去年はサンタのマスクに関してはこんなにピッチリしていなかったと思うけど、今年はキツそうではあるなあ。ま、頑張れよ。」
と先輩。

とりあえず控室でヒーローマスクを装着してから、その上に無理矢理サンタのマスクを(引きのばし、引っぱりつつ)被ってみた。

予想通りほとんど見えないし、呼吸もかなり苦しい。
しかし、サンタでいる時間はおそらく、スタンバイギリギリにマスクを着けたら3分くらいなので頑張れば良いとして、これが一気に脱げるかどうかである…。

案の定、何回やっても途中で引っ掛かる。
しかしそこは強引に頑張って引き抜くしかないと思った。

結果、本番は何とかマスクを取り、マジックテープで前が止めてある上着を脱ぎ、サンタからレッドへの変身シーンは上手くいった。

しかし、サンタで登場した際、会場の子供達は大泣きであった。
怪人にではなくサンタにである。

『仮面の上から仮面作戦』により、優しい笑顔でつくられたはずのサンタのおじいさんの顔が、上下左右にピッチピチに引っ張られ、とんでもない形相なっていたのだ。

私自身は頑張ったが、

「わぁ~ん!何だアイツ。怖いよー!!」

と叫ぶ子供の罵声を浴びつつのサンタ役はシンドかった!!


ざっつえんたイラスト35
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[ 2013/10/14 00:00 ] ざっつえんた | TB(-) | CM(-)

『雑!!演殺陣人達(ざっつ!!えんたてめんつ)』 34:無口な出会いⅡ

『雑!!演殺陣人達(ざっつ!!えんたてめんつ)』

 このコーナーは、和太刀主宰者・清水大輔の子役から始まり、
殺陣師になり、現在に至るまでに出会った人や出来事をかき集めて
バラバラに(思いつくままに)脱ぎ散らかしたエッセイ風の独白文です。





34:無口な出会いⅡ
前回、そして前々回と、私が温泉地でとんでもない経験をしたという話をさせて頂いた。
前々回は『立ち廻り』の仕事そのものでエライ目にあった話。
そして前回は、せめてもの息抜きに山道を散歩していたら熊に遭遇した話。


で、今回は『遭遇したのは熊だけではなかった話』です。

数々の試練をイベントの主催者側から受けた私達のせめてもの楽しみの一つに露天風呂があった。
そこは温泉地というだけあって、岩づくりの露天につかると一日の疲れが癒された。

夜だけでなく、朝早く(私の場合は散歩から帰って)つかる露天風呂は又格別なものであった。

ある朝、散歩から帰った私は一度部屋に戻り、支度をしてから、まだ寝息をたてている仲間を起こさぬようにそ~っと部屋を抜け出し、露天風呂に行った。湯船につかると、目の前は切り立った山肌があった。朝もやに霞がかかったその風景はまるで墨絵のようで、東京では絶対に味わえない贅沢をしている気分であった。

しばらくお湯につかりつつ、「さて、今日の立ち廻りは何をどんな風に工夫すべきだろうか。そろそろ出し物も変えないと、又おかみさんにイジワルされちゃうかもな…。」なとど考えをめぐらしていた私は、ふと、誰かの視線を感じた。最初は私に同じく朝風呂好きの他のお客様が入ってきたのかと思ったが違う。
『人は』私だけであった。

先程の切り立った山肌にそれは立っていた。シカ……いや、カモシカであった。
そう、天然記念物のあのカモシカ。野生のカモシカ!!

全身灰色っぽい毛に覆われ、頭にはツノがチョコンとついている。
そいつが入浴中の私をジッと見つめているのだった。


これには本当に驚いた。野生がどうのというより、カモシカを直に見るなんて生まれて初めての事だったし、湯船と向かいの山肌(つまり『彼』が立っている位置)は意外に近かったから、今にも私の目の前の岩にピョォ~ンと飛び移ってきそうな感じがしたからである。

私は、「うおお!カモシカじゃあ!!」と心の中で叫んでいたが、見つめられたまま動けないでいた。
「カモシカって凶暴なんだっけ?確か幼い頃図鑑で見た事あったけど…。見た目はちょっとユーモラスでカワイイ感じだし、大丈夫なのかも…。イヤイヤそうは言っても野生だし、もしエサが無くて飢えていたら……イヤ、熊じゃあるまいし…。」などと小さなパニックを起こしながら思考をめぐらせていた。

『彼』は奥深い目でジィ~ッとこちらを見つめたまま動かない。そんな時間が10分くらいは続いたろうか。

「もうダメだ、カモシカを見ていて(見られていて)のぼせて倒れたなんて恥ずかしい事態になる前に出よう!!」そう意を決した私は恐る恐る湯船の中で立ち上がり、後ずさりをしつつ、湯を出た。
カモシカは少し動いたように見えたが、体勢的にはあまり変化は無かった。相変わらず奥深い目でこちらを見つめていた。
ざっつえんたイラスト34

部屋に帰ってから、既に起きていた仲間に今出会ったカモシカ君の事を言ったが、誰にも信用してもらえなかった。全員(と言っても私を含めて四人だったが)露天風呂に入った事はあったが、誰もカモシカなんて見た事が無いと言うのだ。

それから私はとりあえずラウンジに行って、朝食前のコーヒーを飲んで、ガラス越しに映る山肌でも眺めようと思い立った。立ったままコーヒーを飲み、大きなガラス窓の前に立った私。すると…。

目の前にアイツ…カモシカ君がいた。無論ガラスの外の山肌の上にである。
そして先程の露天風呂に同じく、奥深い目でこちらを見つめていた。

「ホラ見ろ!!見間違いなんかじゃない。やっぱりカモシカじゃないか。」

私は部屋に戻って仲間を連れてこようかと思ったが、何だかバカバカしく思えたので、それもやめた。
それよりも、この様な山奥のホテルのラウンジで一人コーヒーを飲みながら、窓ガラス越しに天然記念物であるカモシカ君とにらめっことは何とも貴重で贅沢に思えた。
しばし私はそいつと静かににらめっこをしていたが、そろそろ朝食の時間だったので、そいつに別れを告げて部屋に戻った。(もうその事を仲間には言わなかった。)

それにしてもアイツはあの切り立った山肌に立って何をしていたのだろう。
私を見て何か言いたかったのだろうか。「オマエ、今日も一日頑張れよ。」みたいな…。

翌日も、翌々日も何だかアイツに会いたくなって、朝風呂やらラウンジでコーヒーやらをやってみたが、二度とアイツが現われる事は無かった。



[ 2013/09/16 00:00 ] ざっつえんた | TB(-) | CM(-)
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